EVENT REVIEW

 MARS16が動き出している。「孤高の存在」といわれた初期から一転、エンターテイメント性を取り入れた時代を経、現在はごちゃまぜと裏切りを繰り返す天邪鬼へと変貌した彼ら。今回は、北海道『T-4』のプロデュースと『TマニアックスVol.2』を終えたLessに感想をWEB上で掲載しようという企画を持ちかけ、承諾を得たのをいいことに(ニヤリ)、普段は聞くことが出来なかったMARS16及びLess自身が極めようとするTシャツ像を追ってみることにした。

− インタビューを受けるのは珍しいんじゃないですか?
Less そうですね。でも、昔はよく雑誌出てたんですけどね。
− どうして出なくなったんですか?
Less うーーん(宙を見る)。一つには僕等の作品が僕等の全てであって、僕個人が出ても仕方ないんじゃないかな、と。……あと、出るのが単純に恥ずかしい(笑)。
− (笑)照れてる場合じゃないでしょ!でも照れ症だったら新宿でトークイベントをやったり、あと(北海道T-4で)ワークショップとかもやらないでしょうしね、やっぱ出ないのには深い意味があったんじゃないですか?
Less ……僕個人の話がそんなに意味あるのかなってね。まあ、そういうことを思ったりしたんですよ。
− いや、意味はありますよ。ブランドっていうのは服だけでなくそのトータルで判断されるものだと思いますし。MARS16がどう考えてるのか?Lessって一体どんな人なんだって考える人はたくさんいるはずですよ。
Less (間を置いて)何ていうんですかね。実際出るよりも、それを想像するっていう方が実は楽しいんじゃないかなあって、僕は思うんですよ。つまりね、これって音楽でいうと歌詞の裏の意味をいっちゃうようなもんじゃないですか?なんか、そういうことやっちゃうとつまんなくなっちゃうような気がしたんですよ。
− ははあ。でもそれ、間違ってますよね。例えばビートルズの音聴いて、好きな人間はやっぱジョンやポールの話を聞きたがるわけでしょ?別に歌詞の意味を言われても「そうだったのかー」って感動こそすれ、その逆はないですよ。何より、別にそういうことを喋らなくてもインタビューは成り立ちますしね。ただ、単純な好奇心を満たしてくれるってレベルで十分なわけですよ。
Less なるほどね。でも、僕にそんな価値があるんやろうか。
− (笑)怒りますよ!私がこうして来てるのはその為なんだからさ。

「Tシャツって単純に面白いなあって改めて気が付きました」

− で、そんなLessが人前に出てきたわけじゃないですか?それはまたどうしてなんですか?
Less (間を置いて)まず、今回はTシャツありきで話があったこと。そして、その中で僕がやるべき役割があったということですね。僕の趣味がなんやとかそういうのとは全然違う、もっと巨大なプロジェクトの一つに僕を組み込ませていただけたってこと、つまりはそういうことです。
− なるほど、やはり出るのには意味があったわけですね。ところで、「T-4」というのは元々どういった経緯でオファーがあったわけですか?見てる側からみると降って沸いたような話だったのですけど。
Less 確かに。降って沸いたような話でしたね(笑)。元々、僕の知人である2人から同時に話をいただいてまして、それが5月あたりだったんですが、その後、特に連絡が来なかったので、「ああ、面白いけどなくなっちゃったのかなあ……」って思ってたんですよ。それが7月に入ってから急に「北山で行くことになったから」ってことになりましてね。驚きました……
− 結構直前だったんですね。
Less そうですね。ただ、この短期間でTシャツブランドをあの広い会場に集めれるのはMARS16しかない!と言われまして、で、その気になっちゃって(笑)僕の知り合いにドンドン声をかけたわけです。
− 乗せられた(笑)。でも結果から言うと集まったんですよねー。
Less ですね。結局、始まってから来たブランドもありましたが、ロングランなイベントだったので事なきを得たわけです。MARS16が北海道で大々的に知られた瞬間でもありました。
− これまで自身のTシャツしか見てなかったのが、急に他のブランドを集めたわけですよね。いろいろ大変だったんじゃないですか?
Less うーん、そうですね。でもそんな大変じゃなかったですよ。むしろ一Tシャツマニアとして集まるのが非常に面白かったです(笑)。で、Tシャツに対して自分は知らないうちに偏見持ってたんだなあってことと、Tシャツって単純に面白いなあって改めて気が付きました。
− 考えかたまで変わっちゃったわけですね。これってやっぱり今後のMARS16にも影響を及ぼすと考えていいんでしょうか?
Less そうですね。といっても何でも影響受けちゃいますからね。日々衝撃受けて、で成長しようって考えて、気が付いたらみんなで新しい作品を生んでいってますし。
− なるほど。で、T-4なんですがroialvisible elephant 47なんていう海外派から、DEVIL ROBOTSなんて今をときめくデザインチームも参加されてるじゃないですか?普段の交流からこういったブランドが集めれるってのはやはりすごいことですよね。鎖国と思ってたMARS16、実は国交があったんじゃんってね。
Less いえいえ(笑)。カーヴド(visible elephant 47)さんなんかは、T-4自体の告知で来て頂けたわけですし、DEVIL ROBOTSさんやムーヴさんはもう頼み込んでって感じでしたね。他もそうですけど、基本的に特に敵対意識もってブランドやってきたわけじゃないですから(笑)。もうその辺普通ですよ。鎖国やってたらこんなにコラボレートしてないでしょ?むしろ開放しまくってますよ。
− ファックN●GOとか言っているのかなあと(笑)、てっきり。
Less 言ってません(きっぱり)。全然悪くないじゃないですか?他のブランドで認めることはあってもけなすことはないですよ。
− 優等生な発言ですよね。
Less (間を置いて)いや、悪いところがよしんばあったとして、それは単純にどうでもいいことですから。興味ないことをとやかく言っても仕方ないでしょ?
− 確かに。…でも、私の存在意義問われてるようで結構ドッキリしました(笑)

『TマニアックスVol.2』の模様

「考えられる追求は全部やりたい。完成形なんてきっとないし、コダワリは膨張し続けますよ。」

− 最終的に「T-4」は延長して8月31日まで行われたわけですよね。
Less そう、まだやってるんですよ(インタビュー時はまだ開催中だった)。ラストは見ることができませんでした。
− 残念そうですね。ああ、なんだかLessが変わってきている印象が今日のインタビューではありますねー。
Less そうですか?どこが?
− 感情の起伏が穏やかになったというか。昔のギラギラした野心的な感触がなくなりましたね。
Less (笑)どんな人やったんやろう。僕としてはあんまし変わらん感覚ですけどね。
− うん、やっぱ昔はかなり個性が前に出ていて、人の言うことはきかんって感じでした。それが今はこうスクールウォーズの泣き虫先生みたいになってますよ(笑)。
Less ははは(笑)。マニアックで、わからへんって!いや、単に前にあったとき機嫌よくなかっただけじゃないですかね。でも、T-4は本当にずっといましたからね、そりゃあもう最後にいないってのは残念な話ですよ。最後まで居たら泣いてたかもしれないですし。開催中も何回も実は感激で涙が出そうでした……。
− いい話です。そして、『T-4』は途中で抜けて『T-maniacsVol.2』が行われる新宿のロフトプラスワンに北海道から移動したわけですよね。
Less はい。
− 私は今回行かなかったわけですが、内容を簡単に説明するとどういったものだったわけですか?
Less 基本的なコンセプトは前回と変わってません。Tシャツ好きによる集まりで、Tシャツを自慢しあうという。そういったものですね。
− 前回はeuphoriaライヴがあったり、Mars16の作品レビューがあったりとMARS16に付随する内容でしたが、今回はそういう雰囲気ではほとんどなかったんですよね。
Less そうですね。今回はほんとトーク主体でしたし、MARS16云々なんてのも特に意識せず、バンバン面白いブランドや個人を舞台にあげていきましたね。
− それは東京Tシャツ部クラゲさんとメインホストをされたから?
Less そうですね。これってすごいことなんですが、あのサイトが生まれたことで、Tシャツのボーダー(境界線)がさらに無くなった気がしたんですよ、そのなんていうかアングラからメジャーまでですね。あれってまんまマニアックスで僕がやろうとしてたことのWEB版だったわけですから。ああ、出たーって感じです。
− へえー。それがマニアックスにも飛び火したと?
Less そうですね。ですから、MARS16のレビューは今年はええかなと思ったんですよ。もう伝えることは作品に入ってるわけですし。最低限知らない人のために「こういったことやってる」程度は喋りましたけど。
− かなり多くのブランドが来られたというのも今年の特徴ですよね。
Less 壇上に上がってくれた方だけでも、マニック・デプレッションさんイナズマチャンピオンさんハンバーグ009さん悪意1000%さんちくわぶさんハードコア・チョコレートさんとまあ、昔から「おもしろいなー」と思って僕がWEBみてた人たちが来てくれましたね。
− みんなある意味ギリギリの路線(笑)、トークもやばかったのではないですか?
Less (笑)いえいえ。マニックさんを除いて『T-4』にも出てもらったんですが、各ブランド特徴があって、個人的に話してるだけでも充分楽しいです、ほんと気持ちよかったですねー。
− こういった雑多性、雑種性というんですかね?最近のMARS16は本当にいろんな作品を出されてるわけじゃないですか?それがこう、ブランドとの付き合いにも飛び火したような印象を受けますが。
Less そうですね。これからはブランドとの共同作品を考えてますし。MARS16としてはさらに凝った作品が生まれていけばいいわけですから、全ていい方向に進めそうです。
− そういえばストロング・ベイビーでの佐瀬(セコンド)氏参戦も強烈でした。スカルワークスに到ってはMARS16のクレジットが一切入ってませんし。こういった外部参戦が今後も増えるわけですね?
Less うん。もっと増えるべきだと思います。まだ僕等らしさなんて逆に求めてる時期でもないですし。オリジナルも少しづつでますし。何か必然性があったり面白いと感じたときは、形にはこだわらず、いいものをリリースしたいというのが現在の方向ですね。
− オリジナル!!楽しみですねー。最後に今後のMars16のTシャツがどうなるのか?簡潔に教えていただけないでしょうか?
Less 昔から言ってますが、考えられる追求は全部やりたい。完成形なんてきっとないし、コダワリは膨張し続けますよ。その時その時が僕等の全部です、MARS16はそんなブランドです。


<用語解説>

【めーでるT-4】T-shirts For (Men Women Peopele Hokkaido…etc)の略称。
2003年7月25日〜8月31日まで北海道「WINGBAY小樽」のめーでるセンター内に特別に作られたTシャツ展示・販売イベント。のべ数万人の来場者、1300種類を超える販売Tシャツが道内一といわれ、地元新聞・雑誌・TVなどでの話題を独占した。原案はノブ・高橋(スタジオハードデラックス)の考案で、MARS16はイベント全体のプロデュースを任された。

【T-maniacs】MARS16主催のイベント。2002年にスタートし、今年2回目を迎えた。Tシャツに関する薀蓄・自慢・鬱憤晴らしとその全てを開放するのだ、という大層なコンセプトはあるが、まったりしたトークイベントとして親しまれている。音楽を巧みに使ったイベント作りは、音から影響を受けてTシャツを作り出したMARS16ならでは。

文・聞き手:高瀬川 雄一
72年生。ファッション評論家、作家。独自の路線を突き詰めるブランドに焦点をおき、調和性と排他性の狭間を見つづける猛き存在として、近年注目されている。著書は『反裏原宿』『第三世代のTシャツブランド』など。


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